2015年7月27日月曜日

二冊目 幸せの秘密を求めて旅に出る精神科医の話(『Hectors Reise oder die Suche nach dem Glück』 von François Lelord

 目標の100冊に向けて、二冊目を読み終えました。


Hectors Reise oder die Suche nach dem Glück
  von François Lelord 


<あらすじ> 


 この小説の主人公はある一人の精神科医。小さいメガネをかけた姿からは、その頭の良さがうかがえる。患者に対して常に興味を示し、いつも考え深げな顔つきで話に耳を傾ける。そんなヘクターはいわゆる優秀な精神科医だが、自分自身に満足できずにいた。その理由は、自分の力で人々を幸せにできないもどかしさ。そこでヘクターは、“幸福の秘密”を探るべく、世界を旅する決心を固める。彼はその旅の中で出会う人たちにある一つの質問を投げかける。「あなたは幸せですか?」なぜ人間は常により幸せな人生を夢みるのだろう?幸福は、仕事での成功にかかっているのか、それともプライベートの充実が幸福をもたらすのか。幸せは、環境が生み出すものか、それとも私たちのものの見方か。幸せという形のないものの秘密を求めての旅路の果てに、ヘクターは23の答えを導きだし、真の幸せを見つけることは多くの人が思うほど難しくないことに気がつく。



 ヘクターが見つけた23の答えのうちのいくつかを紹介します。「幸せ」について考えさせられる、よい言葉ばかりです。



  Vergleiche anzustellen ist ein gutes Mittel, sich sein Glück zu vermiesen.「比べることが、幸せを台なしにする。」
 

 Glück kommt oft überraschend.「幸せは突然やってくる。」

 Viele Leute sehen ihr Glück nur in der Zukunft.「多くの人は、幸せを未来にしか見ない。」


  Manchmal bedeutet Glück, etwas nicht zu begreifen.「ときに、“何かがよく分からない”ことが幸せになりうる。」

  Es ist ein Irrtum zu glauben, Glück wäre das Ziel.「幸せになることがゴール、という考えは間違っている。」

  Glück ist, mit den Menschen zusammen zu sein, die man liebt.「幸せとは、愛する人たちと共に過ごす時間である。」


  Glück ist, wenn es der Familie an nichts mangelt.「家族に何も不足がないとき、人は幸せを感じる。」

 Glück ist, wenn man eine Beschäftigung hat, die man liebt.「心から好きだといえる仕事を持っているのなら、それは幸せである。」

Glück ist, wenn man spürt, daß man den anderen nützlich ist.「他の人の役に立っていると感じられたとき、人は幸せである。」

 Glück ist, wenn man dafür geliebt wird, wie man eben ist.「ありのままの自分が愛されること。それが幸せである。」

 Glück ist, wenn man sich rundum lebendig fühlt.「生き生きとした人や空気に囲まれているとき、人は幸せを感じる。」

 Glück ist, wenn man richtig feiert.「何かを盛大に祝うとき、人は幸せを感じる。」

 Glück ist, wenn man an das Glück der Leute denkt, die man liebt.「愛する人にとっての幸せを想うとき、人は幸せを感じる。」

Glück ist eine Sichtweise auf die Dinge.「幸せは、それはその人のものの見方である。」




 精神科医であるヘクターは、彼の元を訪れる患者たちを幸せにしてあげられないもどかしさに悩み、そもそも「幸福」とは何かという問いへの答えを見つけるべく、世界中を旅します。ヘクターの旅についていく中で、自分にとっての幸せについて改めて考えることのでき、一気に読んでしまいました。この小説はフランス人作家による作品で、残念ながら日本語訳はされていないようです。

 上に挙げたそれぞれの言葉を見るだけでは、それほど特別なことを言っているようには思えないかもしれません。ヘクターが、旅の中でこれらの真実に気づく過程こそがこの本の面白さです。ドイツ語を勉強中の人は、是非手にとってみてほしいです。シリーズもので続編があるようなので、近いうちに読みたいと思います。


 ※ちなみにこの本は、フランクフルトにあるOxfam-Buchshopという古本屋さんで偶然見つけました。(http://www.yelp.de/biz/oxfam-buchshop-frankfurt-am-main) 
 読み終えた人たちからの寄付で成り立っている本屋さんで、収益は発展途上国の子どもたちのために使われるようです。これからもときどき足を運びたいと思います。

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